支那事變寫真帖，讀賣新聞社，(民國27年|1938)昭和13年5月《Black Water Museum Collections | 黑水博物館館藏》
今支那事變の勃發と共に、皇軍一度起つや正に神業、忽ち北、中、南支に涉
る敵抗日據點を撃破覆滅して戰火嚇々、遂に抗日國民政権に代る明朗新興政權の 自然發生を見るに至りたるが、其の間僅に4歳、東亜の歴史を回轉せしめた此の 偉業のに忠勇武烈なる我が皇軍将兵が生死一如、猛暑酷に身を嚇しつい、天 嶮を越え、泥濘を踏み、又荒天の海空に挑んで屈せず、或は十字砲火を潜りて肉 弾以て堅壘鐵塞を突破せる勞苦辛酸と其の崇高なる盡忠報國の皇軍精神とは、肅然、襟を正さしむるものがある。
事發生するや、我が社は直ちに全通信機構の大強化を図ると共に現地報道 の中樞る北支並びに南支に特派員を派遣すること前後八十餘名、之に十五名の 出先支局員を合流協力せしめて、皇軍力闘奮戦の戦況報道に完璧を期した。然も、 我が社特派員は常に弾丸雨飛の第一線に従軍、敢然身を挺して塹壕職に、渡河戰 に、市街戦に、山岳戰に、攻撃職に、はた又敵前上陸戦に或は空中戦に、有りと凡ゆる猛攻激闘の戦火中に投じたのである。盡忠皇軍の征く處「一死報國」あれ ば、我には「一死報道」の勇猛心があるのである。故あるかな、斯くて我が趾特 派員陣の勇猛決死の活躍は第一線に死闘する皇軍各部隊を驚嘆せしめ、「最前線 に出るのは何時も讀賣の記者許りだ」との折紙を付けさせ、又銃後に於ては「讀賣に依って初めて實戦の眞況が分る」と定評を博するに至つた。
此の間に於て、不幸、我が社渡邊記者、吉島聯絡員の兩名は敵弾道下の第一線に壮烈なる戰死を遂げて報道戰線の華と散り、更に三特派員、一連絡員の四名又敵 弾を受けて負傷したる等、之等き犠牲こそ、とりもなほさず我が無敵特派員の 第一線に於ける華々しき活躍を雄辯に物語るものでなくて何であらう。
本寫眞帖は、實に、我が社特派員が斯る旺盛なる報道精神のもと、勇躍死線を 突破して撮影したる精粋の結晶にして、收むる處四十八葉、何れも砲煙天地を罩めて凄絕無、全く無敵皇軍の真面目を傳へて餘す處なきものである。本輯こそ 絕對他に其の比を見ざる戦争寫眞の決定版として永く後世に傳はるべき聖戦記念 の逸品と信じ、茲に改めて清鑒を仰ぐ次第である。
昭和十三年五月
讀賣新聞社
